2024年度 学会賞
論文賞 | 杉村 佳寿、阿野 貴史、三戸 勇吾、岡田 知也 日本沿岸域学会論文賞受賞報告−論文執筆の背景と日本沿岸域学会への期待− (沿岸域学会誌2023年Vol.36,No.2登載) |
近年、ブルーカーボンへの注目が集まっている中、我が国では横浜市、福岡市、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合によりクレジット制度が運用されています。 先行事例が少ない中、本論文は、博多湾におけるブルーカーボンクレジット制度の事例をもとに、実務レベルで制度運用おける損益分岐価格とステークホルダーの実情を詳細に検証しています。本論文で得られた結果から、今後の全国的なブルーカーボンクレジット制度の展開が期待される中、持続的なブルーカーボンクレジット制度の運用ついて有用な知見を得ています。さらに、クレジットを活用した藻場保全活動の持続可能性について検討しています。その上で、持続可能なブルーカーボン生態系保全活動に資するブルーカーボンクレジットの活用方法と自治体の役割について提案を行なっています。 これらのように、本論文によって明らかとなった事実と論考は、沿岸域研究へ大きく貢献するものであると言えます。 以上を総合して、本論文を論文賞受賞に相応しい論文として推薦します。 | |
論文賞 | 川辺 みどり、尾形 歌穂、片野 俊也、河野 博、小堀 信幸、小山 文大 鈴木 秀和、平野 晴野、古川 恵太、本間 友、丸山 啓太 沿岸域教育実践者の「悩み」−東京湾岸ミュージアム懇談会の談話から− (沿岸域学会誌2023年Vol.36,No.4登載) |
本論文は、東京都内湾で沿岸域教育を実践する博物館等関係者らが、実践上の「悩み」を共有した「東京湾岸ミュージアム懇談会」を事例に、これまで取り上げられることが少なかった沿岸域教育実践者のキャパシティ強化に注目し、実践者の抱える「悩み」を体系的に整理するとともに、キャパシティ強化に向けた課題を把握し、それらの課題を解決・改善するための提案を行っています。これは、「沿岸域の総合的管理」分野において、新規性、有用性とも高い論稿であると評価できます。また、沿岸域教育が抱える課題を実践者のステートメントを使ってシステマティックに分析・評価し、客観的に整理している点や、Kolbの経験学習モデルを実践者と参加者に分け、プログラムの実施で連結ししたうえで、沿岸域教育の課題を位置付けて整理している点も評価できます。 これらのように、本論文によって明らかとなった事実と論考は、沿岸域研究へ大きく貢献するものであると言えます。 以上を総合して、本論文を論文賞受賞に相応しい論文として推薦します。 | |
出版・文化賞 | 新潟の独特遺産である水運の盛んな河川等沿岸域に発達した六斎市による地域振興メニュ
ー開発活動 団 体:NPO 法人 新潟みなとクラブ |
NPO 新潟みなとクラブは、新潟港や信濃川・阿賀野川沿い等の沿岸域のみなとまち振興のた めに、そこで開催されている六斎市に着目し地域振興のための六斎市ツアー、パンフレット作成等 メニュー開発を行った。 六斎市については月6回開催される朝市であり、新潟県の信濃川・阿賀野川流域・日本海沿岸 等に定期市(六斎市)が約60 か所存在する。特に水運・海運の港のあった在郷町や湊町に多数存 在する。六斎市は近代まで全国に存在したが、現在では新潟県・秋田県・愛知県等一部地域だけ で、多数存在するのは新潟県のみである。新潟県の六斎市には現在も多数の買い物客が訪れ、 中には外国人の観光客もみられ、地域振興メニューとして有望と考えられる。 一方新潟県において、近年六斎市に関する全体的調査は実施されていない。出店者も高齢化 し、大型商業施設の進出等のため、現在のうちに記録に残すことが急務である。 このため、新潟の独特遺産である六斎市について、今回県内の現状等の悉皆調査、全国の六 斎市の分布調査を通して、新潟の六斎市の独特性を明らかにし、マップ・カレンダー・パンフレット を作成するとともに、地域振興メニューしての可能性を探るための内陸水運と関連付けた「六斎市 ツアー(社会実験)」を企画・分析し、地域振興メニューを提案し、首長等にも提案した。 こうした取り組みは、歴史的・地理的・経済活動的である六斎市を学術的に調査しかつ再認識し 地域振興に役立てるものである。沿岸域の重要性の理解と認識向上等に堅調に貢献するもので あり、日本沿岸域学会の出版・文化賞の候補にふさわしいと判断した。 | |
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