平成26年度 学会賞
論文賞 | 今村 和志、青木 伸一 「砂浜の環境がアカウミガメの上陸・産卵行動特性に及ぼす影響−豊橋・湖西海岸の事例より− 」 (沿岸域学会誌Vol26,No.3,pp.41-52) |
本論文は、アカウミガメが産卵のために上陸する海岸の砂浜環境について、現地調査を行い、本種の産卵に適切な砂浜幅や植生帯などの海岸の条件を明らかにしている。さらに、ウミガメが上陸しやすくするための消波ブロックを陸側へ移設することで、実際にウミガメの産卵時の移動距離が長くなったことを示している。一つの事例とはいえ詳細に定量的に検討しており他の海岸についてもある程度適用可能な結果が得られており、有用性の高い論文と評価した。 |
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論文賞 | 淺井 正、小田 勝也 「廃棄物海面処分場の早期安定化がコスト構造の改善に与える効果に関する検討」 (沿岸域学会誌Vol26,No.3,pp.105-116) |
本論文は、廃棄物最終処分場の建設から閉鎖・廃止までのコストを低減し期間を短縮するために、建設、跡地利用、長期維持管理などの各段階のコスト構造を分析し、中間処理の合理化による廃棄物の早期安定化がコスト構造の改善に与える効果をモデル化している。その結果、本体および付帯施設の建設費、埋立費用、元利償還金の占める割合が多いことが示され、建設コストの縮減と廃止までの期間の短縮による支払利息の低減が長期コストの低減に効果があると示されている。また、廃棄物海面処分場の運営管理者にとって長期コストを低減するための提案が示されており、実務でも有用な論文と評価した。 |
論文奨励賞 | 該当なし |
出版・文化賞 | 出版物:「日本の港湾政策 ―歴史と背景―」 (2014年3月18日発行) 著者:黒田 勝彦 |
日本の港湾は、この20年余、世界における物流構造の激変と飛躍する船社のビジネスモデルに直面してきた。日本で基幹航路は維持できるのか、基幹航路維持を担う港湾運営の主体はどうあるべきかが、多くの識者の問題意識となっている。 本書は、この問題を解くために不可欠な日本の港湾施策とその背景を正確に認識することができる。編著者は、長きにわたり日本の港湾政策・計画・運営に関わられ、その知見と見識を書として世に出された。今、多くの識者・港湾人が強く望むところであり、出版・文化賞にふさわしい書籍であると評価した。 |
出版・文化賞 | 出版物:「日本漁業の制度分析 ―漁業管理と生態系保全―」 (2013年7月10日発行) 著者:牧野 光琢 |
本書は、日本漁業制度の全体像をわかりやすく解説したはじめての体系的な著作であると同時に、漁業権制度を特徴とする日本の漁業制度について深い考察を加えている。さらに、著者の独創的な研究成果をベースにして、日本的漁業管理経験に科学の光を当てている。 漁業管理における日本型漁業管理制度の制度的優位性を、暗黙知的・情調的な語りではなく、論理的・科学的なエビデンスで検証しており、類書にありがちな論点の拡散や不整合性がなく、理論を踏まえて独創的な実証分析を展開している。学術書としての完成度が高く、出版・文化賞にふさわしい書籍であると評価した。 |
功労賞 | 黒田 勝彦 (前会長) |
JAMSTEC中西賞
今村 和志、青木 伸一 「砂浜の環境がアカウミガメの上陸・産卵行動特性に及ぼす影響−豊橋・湖西海岸の事例より− 」 (沿岸域学会誌Vol26,No.3,pp.41-52) |
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本論文は、論文編集委員会における査読時の新規性に関する評価について、他1件の論文より高い評価を得ている。さらに、委員会において審議した結果、現地観測結果を詳細かつ定量的に分析し、他の海岸においても適用可能な結果が得られており、大変有用な研究と判断した。以上のことより、本論文は他1件の論文よりも優れた論文と評価した。 |
研究討論会優秀講演賞
秋本 悠喜(日本大学) 「市民認知を継承する津波碑の保存・整備に関する研究 −(その2)青森県・宮城県における現地調査結果に基づく考察−」 池田真啓(千葉工業大学) 「ビオトープの構造要素を用いた沿岸域環境教育の試み」 鷹島 充寿(日本大学) 「大型クルーズ客船の受け入れ体制に関する研究 −全国の港湾に対するアンケート調査結果−」 長谷川 満加(千葉工業大学) 「内海離島のネットワーク指標と社会環境との関連性分析」 藤井 裕司(大阪大学) 「海洋レーダーデータの信頼度が4次元変分データ同化に及ぼす影響」 桝谷 英一(水産大学校) 「鹿児島県吹上浜の砂浜海岸潮間帯のマクロファウナ群集」 山下 和浩(日本大学) 「マイクロバブルと微生物活性剤を用いた堆積汚泥の浄化実験 −活性剤の酵素成分比率による浄化性能−」 (五十音順) |